家族の介護が必要になると、仕事との両立が難しくなり、離職をする方も少なくありません。
2022年の厚生労働省の調査によると、介護や看護を理由に離職した方は約7.3万人にものぼります。
介護離職をされた方を年齢別にみると、男女ともに55~59歳が最も多いとの統計が出ています。
まだ住宅ローンの支払いが残っていたり、老後資金の準備段階である世帯も多いことでしょう。
そのような中、離職という選択をしなければならなかったのは、本当にみなさん苦渋の決断だったこととお察しします。
しかし、介護はお金もかかり、期間も長期に及ぶことが多いですから、できるだけ介護離職は避けたいところです。
仕事を続けていると介護から離れる時間を持つこともできるので、精神的な助けになる場合もあります。
そこで本日は、介護離職を考える前に、まずは活用していただきたい介護休暇と介護休業についてご紹介したいと思います。
介護休暇と介護休業の違い
介護休暇と介護休業は言葉も似ているので同じと思われがちですが、実はそれぞれ別の制度なんですよ。
どちらも国に認められた権利ですが、介護休暇は短期間の休暇が与えられるのに対し、介護休業は長期間のお休みが認められる点に違いがあります。
具体的にどう違うのか見ていきましょう。
介護休暇
介護休暇は
労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護や世話をするための休暇
と育児・介護休業法で定められています。
対象となる家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は年10日まで休暇を取得することができます。
対象となる家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫とされています。
休暇は、1日または時間単位で取得することが可能です。
病院の付き添いや、ケアマネージャーさんとの面談などの際に活用すると良いですね。
申請は口頭での申出が認められていますが、会社によっては既定の書面があるかもしれませんので、お勤め先に確認してみるとよいでしょう。
また、ほとんどの会社では無給と定められているかと思いますが、この休暇を取得する労働者に不利益を与えるようなことをしてはいけないと定められています。
介護休暇を取ったことを理由に、基本給が下げられてしまうなどということは違反に当たりますので、安心して取得してくださいね。
万が一そのようなことがあった場合は、労働局に相談してみましょう。
さらに、要介護状態の家族の介護を行っている労働者に対し、「所定時間外の労働や一定以上の時間外労働をさせてはいけない」という決まりもあります。
こちらは、申請1か月後から対象となります。
申請後1年間と期間が定められていますが、何回でも申請可能です。
ご家族に介護が必要となった場合は、できるだけ早く会社に申し出るようにすると良いでしょう。
介護休業
介護休業も介護休暇と同じく、「要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護や世話をするために取得することができる」と定められています。
ただし、パートやアルバイトの方は少し注意が必要です。
介護休業を取得する予定の日から数えて93日~6か月を過ぎる日までに契約期間が満了し、更新されないことが分かっている場合には、介護休業を取得することができません。
また、入社1年未満の方や1週間の所定労働日数が2日以下などの労働者は対象外と労使協定で定めている場合があります。
もし就業規則でそのような定めがあったとしても、簡単にあきらめずに会社に相談してみましょう。
いつからだったら取得できるかなどの相談に応じてくれるかもしれません。
話しを戻しまして、対象となる条件を詳しく確認していきましょう。
対象となる家族は、介護休暇と同じく、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
対象となる家族1人につき3回まで、通算93日まで休業することができます。
申請は休業開始予定日の2週間前までに書面等によって事業主に申し出る必要があります。
会社所定の様式がある場合はそちらに従うようにしましょう。
介護休業も就業規則では無給となっている会社がほとんどかと思います。
しかし、雇用保険に加入している場合は、雇用保険から介護休業給付金の支給を受けることが可能です。
介護休業給付金について確認していきましょう。
介護休業給付金
介護休業給付は
家族を介護するための休業をした被保険者で、介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月又は介護休業開始日が令和2年8月1日以降であって、介護休業開始日以前の2年間に賃金支払基礎日数の11日以上の完全月が12か月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である完全月(過去に基本手当の受給資格の決定を受けたことがある方については、基本手当の受給資格や高年齢受給資格の決定を受けた後のものに限る。)が12か月以上ある方が支給の対象
引用:ハローワークインターネットサービス
とされています。
上記の条件を満たした上で、
- 介護休業期間中に休業開始前の1か月あたりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
- 就業している日数が10日以下であること
の要件を満たしている場合、次の金額の支給を受けることができます。
休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×67%
この賃金日額というのは、介護休業を開始する前6か月の賃金を180で割ったものを指します。
例えば毎月20万円のお給料の方の場合だと
(20万円×6か月÷180)×30日×67%=13万4千円
が休業期間中、毎月支給されることになります。
毎月のお給料より少し減ってしまいますが、ある程度の収入が保障されていますので、大変ありがたい制度ですよね。
また、パートなどで毎月の収入が少ない場合でも、給付額の下限は8万6070円(2024年8月現在)と定められていますので、とても助かりますね。
この約3か月間を使って、介護を受けるご家族に合った介護サービスなどを見つけられるとよいでしょう。
ちなみに、介護の対象となる家族が別であれば再度取得することが可能ですよ。
まとめ
- 介護離職をする人は年間7万人以上にのぼる
- 介護休暇は年間5回を限度に何回でも取得できる
- 介護休業は対象者1人につき3回まで、通算93日間取得できる
- 雇用保険の被保険者は、介護休業を取得した際に賃金の67%が保障される介護休業給付を受けることができる
私は以前、介護や医療の職に従事していましたので、様々なご家族様を見たり、たくさんのお話を聞かせていただいたりしました。
介護はある日突然やってきます。
最初のうちは本人もご家族も戸惑われ、病院に連れていくことに苦労されるご家庭もたくさんあります。
しかし、特に認知症の場合は、早期に治療を開始することで、その進行を遅らせることができることが分かっています。
「いつもと違うな」
と感じたら、近くの地域包括支援センターなどに相談してみましょう。
介護の必要があれば、要介護認定の段取りをしてくださったり、頼りになるケアマネージャーさんなどを紹介してもらうことができますよ。
また、介護休暇や介護休業は、決して要介護者の為だけの休暇ではありません。
この休暇を使って、介護をする側もリフレッシュしていいんですよ。
後ろめたく思う必要はありません。
ましてや、介護があるからといって、自分の将来の夢を諦めたりしないで欲しいと私は切に願っています。
上手にお休みを活用することで、介護と仕事の両立もきっとうまくいくでしょう。
困った時は、遠慮なく頼ってください。
介護のことはケアマネージャーさんを中心とした介護や医療従事者の皆さん、お金に関する心配事は私たちFPが力になります。
みんな、あなたとあなたのご家族のことを大切に想っていますよ。