令和6年10月から薬局でジェネリック医薬品でないお薬(先発医薬品)を希望すると、患者様の自己負担額が増えることになりました。
厚生労働省「令和6年10月からの 医薬品の自己負担の新たな仕組み」
みなさんは薬局で
「ジェネリックをご希望ですか?」
などと聞かれたことがありませんか?
私は長い間「ジェネリック医薬品とは何か」をご説明してきた立場でした。
そして
「ジェネリックは効かない」
「なんとなく使いたくない」
と言ったお声もたくさん聞いてきました。
それなのになぜ薬局はジェネリック医薬品を勧めてくるのか不思議ですよね。
しかも10月からはジェネリック医薬品にしないと薬局でのお支払い額が増えてしまいますから、
「ジェネリック医薬品が安全ならば安く済ませたい」
という方も多いのではないでしょうか?
今日はそんなみなさんの不安や疑問を解消したいと思います。
この記事では、ジェネリック医薬品のメリット・デメリットをベテラン調剤薬局事務管理士が解説します!
とっておきの情報もありますので、ぜひ最後まで読み進めてくださいね。
なぜ調剤薬局ではジェネリック医薬品を勧めてくるのか
調剤薬局でジェネリック医薬品を勧めてくる理由は主に2つあります。
- 国の医療費が圧迫しているから
- ジェネリックを勧めないと薬局が潰れてしまう仕組みになっているから
上記の2つの理由は実はとても密接に関係しています。
下のグラフをご覧ください。
こちらは1984年から現在までの調剤における医療費をグラフにしたものです。
医療費には国の税金が使われているのはみなさんご存じですよね。
例えば、3割負担の患者さんが薬局でお薬を貰われた場合、
患者様が支払うお薬代が3000円であれば、国が負担する医療費は7000円となります。
上のグラフが示しているように、医療費は年々増加していますから、国が医療費に対して使う税金も当然増加しています。
この増加分を補うために、みなさんの健康保険料や税金が上がったりしているという訳です。
しかし増税は国民の負担になりますから、政府は何とかしてこの医療費を下げようと様々な施策を打ち出しています。
その一つがジェネリック医薬品の利用推進です。
ジェネリック医薬品は先発医薬品に比べお薬の値段が安く抑えられています。
ですから、より多くの患者様にジェネリック医薬品を利用していただくことで、医療費を削減しようということが長年行われています。
しかしジェネリック医薬品に対して不安を持たれている方は少なくありませんから、簡単に移行することはできません。
そこで政府が行ったのが、
「ジェネリック医薬品を調剤した数が多い薬局ほど、より高い報酬を与える」
という施策です。
みなさんが薬局で支払われるお薬代というのは、国が定める「調剤報酬点数表」というもので決められており、1点につき10円の報酬を薬局が請求できる仕組みになっています。
現在では、調剤するお薬の数の80%以上をジェネリック医薬品にするように求められており、この割合が5%上がるごとにより高い点数を得られる仕組みになっています。
逆にジェネリック医薬品の割合が50%を下回ると、減点されてしまうのです。
調剤薬局の運営費のほとんどは調剤報酬で賄われていますから、より多くのジェネリック医薬品を調剤しなければ薬局は潰れてしまうのです。
ですから薬局の窓口ではジェネリック医薬品を勧めてくるというワケです。
ジェネリック医薬品のメリット
1.お財布に優しい
ジェネリック医薬品は先発医薬品に比べてお薬の価格が安く抑えられています。
ですから、みなさんのお財布にも優しいというメリットがあります。
例として、高血圧症の治療薬であるアムロジピンを比べてみましょう。
商品名 | 1錠当たりの金額 | |
先発品 | ノルバスク錠10mg | 15.2円 |
ジェネリック | アムロジピン錠10mg | 10.1円 |
1錠あたり5.1円の差が出ることがわかりますね。
このお薬は1日1回服用するお薬ですので、30日分処方された場合は153円の差額となります。
高血圧の治療は長期にわたることが多いので、この差はどんどん広がります。
また、日本で高血圧症の治療をしている人口は4300万人ともいわれています。
もし1か月間全員がジェネリック医薬品を使用すると、65億7900万円もの医療費が削減できることになります。
凄い金額ですよね。
最近では調剤薬局に来られる患者様のほとんどがジェネリック医薬品を選択されています。
もしこれらの方々が先発医薬品を希望された場合、とんでもない額の医療費が増加してしまうことになりますよね。
その結果は増税という形で私たちにのしかかってくることになりかねません。
ジェネリック医薬品は先発医薬品と効能効果は同じです。
一人でも多くの人がジェネリック医薬品を選択することで明るい未来へつながるでしょう。
2.服用しやすいよう改良が加えられている
そもそもジェネリック医薬品とはなんでしょうか?
お薬は新薬として世間に出るまでに様々な厳しい試験を突破しなければなりません。
その開発には長い年月と膨大な開発費がかかります。
そのため、新薬が開発されてから20~25年ほどの間、製造・販売にかかる特許が製造メーカーに与えられます。
その特許が切れると、他の医薬品メーカーも同じ有効成分を利用したお薬を製造・販売することが可能となります。
これがジェネリック医薬品です。
新薬を製造する過程で様々な試験をクリアしていますから、研究費の一部が抑えられるため価格が安く済むのです。
もちろんジェネリック医薬品も厳しい検査に通らなければ世の中に出ることはできません。
ジェネリック医薬品メーカーは先発医薬品と同じレベルの医薬品である証明をしなければなりませんので、様々な研究開発を行います。
その過程で、例えば少し苦みの強い成分であれば飲みやすくなる工夫をするといったことも可能なのです。
これは、後出しだからこそできるメリットとも言えます。
「ジェネリック医薬品は怖い」
そんなイメージも持たれがちですが、
「ジェネリック医薬品の方が良い」
といったこともあるんですよ。
ジェネリック医薬品のデメリット
「ジェネリックに変えたら副作用が出た」
こんな話を聞いたことがありますか?
お薬を変えると副作用が出たり、効果が出ない方がごく稀にいらっしゃるのは事実です。
こんなことを話すと怖いと思われるかもしれませんね。
これには主に3つの理由が考えられます。
1.お薬に使われている添加物に対する反応
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と「品質、有効性、安全性」に差異がないことを証明しなければ審査に通りません。
逆を言えば、それ以外は差異があっても審査に通るということです。
例えば、味を付けるための添加物などです。
このような材料も踏まえて「品質、有効性、安全性」に差異がないので、先発医薬品とまったく同じとは限らないのです。
ですから、お薬に含まれる添加物が変わったことで、その添加物にアレルギー反応を起こすということが考えられます。
一方で、このような反応は逆のパターンも考えられるのです。
ジェネリック医薬品では問題なかったのに、先発医薬品に変えたら副作用のような症状が出てしまう方や、同じジェネリック医薬品でも製造メーカーを変えたら反応してしまう方もいらっしゃいます。
つまり、先発品であってもジェネリック医薬品であっても、その方の体に合う・合わないは分からないのです。
先発品もお薬なので、副作用が出る可能性は否定できません。
2.効果効能が適用外だった
お薬には様々な効果効能があります。
A・B・Cという症状に効果があるの先発医薬品に対して、そのジェネリック医薬品にはA・Bという症状にしか効果がない場合があるのです。
医師がCという症状に対してお薬を処方していた場合に、このジェネリック医薬品を服用しても改善は見られないですよね。
それを防ぐためにあるのが調剤薬局の窓口で行っている問診です。
「症状は病院で話しているんだから薬局ではいちいち聞かないで欲しい」
と言われることがあります。
薬剤師さんは薬のプロですが、処方した医師の意図が分からなければ、それが正しい処方なのか判断できないことがあるのです。
そのため、まず患者さん自身にお尋ねして薬が間違いないか確認を行います。
非常に大事な確認です。
しかし患者様から問診を拒否されてしまうと、Cという症状に対して効かない薬を調剤してしまう可能性があるのです。
このようなことを起こさないためにも、薬局での問診にご協力いただけると幸いです。
3.プラセボ効果
「病は気から」
とはよく言ったもので、お薬を飲んでいるだけで安心して症状が和らぐといった患者様もいらっしゃいます。
たとえば、
「これはよく眠れる薬だよ」
と言ってラムネを飲んでいただくだけで寝つきが良くなる方が一定数いらっしゃるのです。
これをプラセボ効果といいます。
不思議なことに、この方がラムネを飲むのをやめると途端に眠れなくなってしまうことがあるのです。
これと同じで、これまで服用していたお薬と見た目や名前が変わってしまうだけでお薬の効果が発揮できない方がいるのです。
人間の体って不思議ですよね。
「私は絶対治る」
と思っている方が、体には良さそうですね。
まとめ
- 令和6年10月からジェネリック医薬品でないお薬を希望すると会計が増えることがある
- 薬局でジェネリックを勧められるのは、医療費の増大を防ぐためである
- ジェネリック医薬品の方が優れている場合もある
- 正しいお薬の服用のために、患者様の協力が不可欠である
ジェネリック医薬品の中には「オーソライズド・ジェネリック(AG)」といって、先発医薬品と完全に同じというお薬もあります。
成分・添加物・製造方法などが全く同じなのです。
しかも開発費が必要ない分、価格は抑えられているという、ありがたいお薬です。
たとえば最初の方で例に使用したアムロジピンは先発品であるノルバスクとまったく同じAGがあります。※AGは製造メーカーが限定されます
このようなお薬を積極的に取り扱っている調剤薬局もありますので、かかりつけ薬局を選ぶときの1つの目安にしてもいいかもしれませんね。