本日、日本人の平均寿命が3年ぶりに上昇したことが厚生労働省より発表されました。
厚生労働省の発表によりますと、令和5年の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳となったそうです。
また諸外国と比較すると、男性が第5位、女性はなんと1位なんだとか!
1位をとれると嬉しいものですね。
医療の発展や、日本の国民皆保険制度がいかに充実しているかがうかがえます。
ところでみなさんは、生命保険の保険料がどのように決められているかご存じですか?
実は今回発表された平均寿命と密接に関わりがあるのです。
もしかしたら今後、保険料がぐ~んと上がってしまうかもしれませんよ。
保険料の決まり方
生命保険料は、各生命保険会社が自由に決めているわけではなく、ある決まった法則に基づいて決められています。
生命保険料は、「大数の法則」と「収支相等の原則」というものに基づき、3つの予定基礎率を用いて算出されます。
大数の法則と収支相等の原則
【大数の法則】
数少ない事象では不確かなことでも、多くの事象を集めて大きな数でみると、一定の法則があること
【収支相等の原則】
「必要十分の法則」とも呼ばれていて、以下のように保険料を計算します。
契約者全体が支払う保険料の総額(収入) + 保険会社の運用収益
= 保険会社が受取人全体に支払う保険金の総額(支出) + 保険会社の経費
これだけ見ると
「保険会社って利益ゼロなの?」
と思いますよね。
でもそんなことでは会社は成り立ちません。
では、いったいどこで保険会社が利益を得ているのかというと、次の3つの予定基礎率によって、最終的な保険料が決まります。
3つの予定基礎率
生命保険の契約者が支払う保険料は、保険会社が支払う保険金に充てられる純保険料と、保険会社の経費や利益などといった保険事業の運営に充てられる付加保険料から決められています。
純保険料は、「予定利率」と「予定死亡率」から計算され、付加保険料は「予定事業利率」から計算されます。
つまり、生命保険の保険料は、
- 予定利率:保険会社が運用によって得られる予定収益の割合
- 予定死亡率:統計に基づいて算出された性別、年齢別の死亡者数の割合
- 予定事業利率:保険会社が保険事業に必要とする費用の割合
この3つの予定基礎率によって決まるのです。
予定利率が高く見込まれると保険料は安くなる一方、予定死亡率や予定事業費率が高く見込まれると保険料も高くなります。
だったら、平均寿命が延びているということは、亡くなる人が減っているということですから、死亡率も下がって保険料も下がるのではないかな?とも考えられますよね。
実はそうではないのです。
予定死亡率は、性別や年齢別ごとで分けた統計によって求められます。
実は、平均寿命の発表と同時に、男女別の「簡易生命表」というものが厚生労働省から発表されます。
この簡易生命表には生後0か月から105才までの年齢ごとの死亡率が示されています。
今回発表された簡易生命表では、例えば0か月の男の子の死亡率は0.00065、105歳の男性は1となっています。
その年齢の人が人口に対してどのぐらい亡くなったか、あと何年生きられるかなども計算の要素となり、若いほどその数値は低く、高齢になるほど高くなります。
実際に計算してみよう
例えば40歳男性の場合で令和5年簡易生命表の数値を用いて保険料を計算してみましょう。
条件:40歳男性、死亡率0.00102、死亡補償金額1,000万円、保険期間1年
そして、この保険会社では1000人の40歳男性がこの保険を契約すると見込んでいるとします。
〈1年間で保険会社が支払う金額〉
1,000人×0.00102=1.02人※予定死亡率
1,000万円×1.02人=1,020万円※支払う保険金の予定額
〈契約者が負担する保険金額〉
1,020万円÷1,000人=10,200円※保険料
これが今回男性の平均寿命となった81歳の方の場合で計算してみましょう。(死亡率0.05924)
年齢以外は同じ条件としますね。
〈1年間で保険会社が支払う金額〉
1,000人×0.05924=59.24人
1,000万円×59.24人=5億9,240万円
〈契約者が負担する保険金額〉
5億9,240万円÷1,000人=592,400円
となります。
実際にはこの年齢になると40歳に比べて契約者の数は大きく減っているでしょうから、こんなに極端な金額にはなりませんが、単純に計算をすると、支払いのリスクが高い分、保険料が上がるということです。
さらに今回は女性の平均寿命が世界一位とのことですから、女性の場合も見てみましょう。
比較しやすいように、男性の平均寿命である81歳で計算してみましょう。(死亡率0.02269)
〈1年間で保険会社が支払う金額〉
1,000人×0.02269=22.69人
1,000万円×22.69人=2億2,690万円
〈契約者が負担する保険金額〉
2億2,690万円÷1,000人=226,900円
男性よりもずっと低い金額となりましたね。
女性は男性よりも長生きする傾向がありますから、死亡率が男性よりも低く、保険会社が支払う保険料の金額が少なくなります。
そうすると女性の方が保険料が安くてお得のように見えるでしょう。
しかしよく考えてみてください。
平均寿命だけで考えると、女性はこの後6年は生きる計算になりますから、あと6年分の保険料を保険会社に支払う必要があります。
ですから、トータル的には長生きする女性の方が保険料が高くなりやすいのです。
実際にはもっと早い段階で満期を迎え保険料の支払いを終えているでしょうから、81歳や87歳までのお支払いはないでしょう。
しかし保険会社は満期を終えられても終身保険などという形で契約者様にお支払いをするお約束をしていますから、平均寿命が延びるほど、支払う予定の総額が高くなり、高い保険料を設定せざるを得なくなってしまうんですね。
まとめ
- 日本人の平均寿命が3年ぶりに上昇し、男性が81.09歳、女性が87.14歳となった
- 生命保険の保険料は、保険会社が自由に決めているわけではなく、一定の法則や予定基礎率に基づいて決められている
- 保険料は年齢や性別によって異なり、年齢が若いほど保険料が安く、男性よりも女性の方が保険料が高くなる傾向がある
今回、平均寿命が延びたということは大変喜ばしいニュースでしたね。
しかし、生命保険料という観点からみると、もしかしたら今後は保険料がぐっと上がっていく可能性も考えらます。
できるだけ保険会社さんには企業努力で運用利益を上げたり、経費を抑えてお客様に安く保険を提供していただけることを期待したいですね。
また、私たちも平均寿命が延びても健康寿命が長くなければ楽しく生きることができません。
日々運動したり食生活に気を付けて、平均寿命と共に健康寿命も伸ばせるようにしていきたいものですね。